芸術家

アルヴァ・アアルトの人生をかけた芸術とは?歴史と作品たち

サンタクロース、トナカイ、ムーミン…フィンランドといえば素朴でのどかな印象がある方が多いのではないでしょうか。

ですが、フィンランドは北欧デザインの聖地と呼ばれる都市、ヘルシンキを抱え、実用的でありながらも遊び心を失わない建築や家具、雑貨が街中に溢れています。日本では北欧デザインと言われると家具や雑貨を連想しますが、実は建築も北欧デザインの仲間に分類されます。

その北欧デザインを語るときに欠かせないのがアルヴァ・アアルトという人物です。建築家でありデザイナーでもあったアアルト。彼はいったいどのような人物で何を求め生きたのでしょうか。

人と自然を見つめ続けた人生

アルヴァ・アアルトといえば北欧のモダニズム建築を代表する人物です。

日本ではあまり耳にしない人物ですが、フィンランドの人々にとっては紙幣にされたほど身近な存在で、ヘルシンキの街中には彼の設計した建物がいくつも現存しています。

アアルトは1898年フィンランド中西部に生まれました。父が測量士だったこともあり、コンパスなどの製図用具は彼にとって身近なものだったようです。その影響もあってかヘルシンキ工科大学に進学し、建築を学びました。この頃に後の妻となるアイノと出会います。

彼女自身もデザイナーで、自然の光景をモチーフにした作品をいくつも残しています。おしゃべりなアアルトともの静かなアイノ、正反対な二人でしたが私生活だけでなく制作の場面でもパートナーであり、1949年に彼女が死去するまでその関係は続きました。

悲しみにくれるアアルトでしたが、その3年後にエリッサという女性と再婚します。彼女もアアルト同様、建築家であり、デザイナーでした。彼女はアイノと同じように、アアルトのパートナーとなり、彼の死後その遺志を引き継ぎ残された建築やデザインを完成させていきます。

アアルトは1976年に没するまでフィンランドで暮らし続け、生涯に渡って人と自然の調和を考え続けました。

彼はフィンランドのモダニズム建築の巨匠と呼ばれていますが、モダニズム建築とは本来は合理性や機能性を重視した建築様式です。しかし、彼はその中にあえて自然の素材を取り入れ、人の暮らしやすい環境を作り出そうとしました。この考え方は北欧中に広がっています。

現代ではmarimekko(マリメッコ)IKEAなどの企業だけでなく個人にも受け継がれており、アアルトは「北欧デザイン」の父と言っても良い存在でしょう。

建築とデザイン、共通するアアルトの空間への意識

建築家であり、デザイナーでもあったアアルト。彼は建築、デザイン両方の場面で自然との調和を意識していました。彼が亡くなってから45年近く経った今でもそれらは色褪せず存在し、人々の生活を見守っています。

では、アアルト自身がデザインをしてきた作品を3つ紹介していきます。

・フィンランディア・ホール

・アアルトのアトリエ

・stool(スツール)60

1つ1つにアアルト自身のこだわりを見ることができますのでぜひ読んでみてください。

 

 

フィンランディア・ホール

フィンランディア・ホール

引用:https://www.alvaraalto.fi/en/architecture/finlandia-hall/

1975年に完成し、アアルトの晩年の作品でフィンランドを代表する建築のひとつです。首都のヘルシンキ、トーロ湾のほとりに建設されました。大小様々なコンサートホールと議会場を兼ねた複合施設で、ここでは現在も様々なイベントが開催されています。

真っ白な漆喰のように見える外壁は大理石と樹脂を合わせた新素材でできています。バスケットの様な編み込み模様の装飾も美しく、白い外壁が空と海の青によく映え、まるでフィンランドの国旗を表している様です。巨大でありながらも威圧的でなく静かに佇む姿が印象的といえるでしょう。

フィンランディア・ホールの大ホール

引用:http://school-a.com/?p=2947

「建築、その真の姿は、その中に身を置いた時に初めて理解されるものである。」

という言葉をアアルトは残しています。この大ホールは、まさにその真意を感じることができる空間になっています。

整然と並べられた座席は無駄がなく、空間に圧迫感を与えることもありません。そして二階部分を階段状に配置することで緊張感を出し、空間が間延びすることを防止しながらも、同時に奥行きを感じさせるデザインになっています。建築だけでなくデザインも行なっていたアアルトだからこそ、人が使う空間というものに敏感だったのかもしれません。

 

アアルトのアトリエ

アアルトのアトリエ

引用:https://blogs.yahoo.co.jp/scancook08/35901540.html

アアルトといえば【モダニズムと自然の融合】。

それを実現させ、その精神をより間近に感じられるのがこの建物です。白い外壁と建物を大胆に覆う木材が印象的で、彼が目指そうとしていたものを一目で感じることができます。現在は記念館のようになっており誰でも内部を見学することが可能です。

アトリエ内部

引用:http://www.linea.co.jp/info/detail/?iid=307

家の中に一足踏み入れると、彼のデザインした家具が部屋中に溢れています。もちろん妻のアイノの作品も多く残されており、二人が今でもこの家に住んでいるのではないか、と錯覚させられるほど当時の姿をそのまま残しています。

外装で印象的だった木材は内装にも使われており、フィンランドの厳しい冬でも木のぬくもりが感じられ、心が落ち着くような空間になっていると言えるでしょう。

次に目を引くのは室内の明るさです。大きな窓が大胆に配置されており、そこから自然光が入り込んできます。室内が暗いと空間の活気が失われてしまいますが、アアルトは照明を中心に光を得ようとはしませんでした。自然光と人工光の違いを知っていたからでしょう。ですが、彼は照明を一切置かないという極端なことはしません。自然光を中心に足りないところは照明で補う、適材適所の考え方で暮らしやすさを優先しました。

自然との調和を求めながらも機能性を保ち、人に寄り添い暮らしやすさを求めたアアルトの志が感じられます。

stool(スツール)60

stool(スツール)60

引用:https://www.artek.fi/en/products/stool-60

「あれ?どこかで見たことある」と思った方も多いかもしれません。クニャッと曲がった三本の脚が印象的で、アアルトの建築の精神がこのような小さな椅子の中にも宿っています。この独特の曲線はフィンランドで生まれた技法、引き曲げにより生み出されました。

アアルトの故郷であるフィンランドは森と湖の国と呼ばれるほど自然が多く存在し、森林資源も豊富です。ですが産出される木材の多くが松、もみ、白樺などで家具材には向かないものでした。それらの木材を利用するために考えられたのが、この引き曲げという技法です。

別名「アアルトレッグ」と呼ばれ、アアルトがこの技法を開発しました。自然をそのままを使うのではなく、その物に少し手を加え利便性や機能性も追求する柔軟な姿勢はフィンランディア・ホールの外壁の開発時にも活かされています。

この椅子は現在でも購入することができ、1933年に発表されて以来、80年以上世界中で愛されています。アアルトの名前をご存知ない方でも知らないうちに座っていた、なんてことがあるかもしれません。

アルヴァ・アアルトの芸術大海

アアルトが目指した自然との「融合、調和」「合理性、機能性」を最優先するモダニズム建築に相反する考え方でした。この相反する要素を見事に融合させ、権威のための建築を脱し、生活のための建築を実現させました。その中には現役の書店もあるほどで、死後も人々から愛されていることが伺えます。

彼は現代の日本でもよく知られる北欧デザインの源流と言っても差し支えないでしょう。その考え方は合理性だけを求めすぎた現代社会に、違う価値観を提示してくれているのかもしれません。